身体の使い方を学ぶ:固定支点と支点揺動

身体の中心ってどこ?


まず一つ目に挙がるのが「仙骨前」でしょう。
いわゆる物質としての身体の「重心」と呼ばれる場所です。

もう一つ挙げられるのが、「腹」や「腰」、「コア」など総じて「体幹」と呼ばれるところです。


こちらは運動指導をしている人が多く答えるパターンかと思います。
とくにピラティスなんかは腹圧を高めてから動くような指導方法が推奨されています。

このように、身体の中心を考えはじめるとたくさんの意見が出てきます。



身体の中心はたくさんある


まず一つ目の重心ですが、これは「質量中心」といって、いくつかの作用点の平均値として特定の点を割り出した中心点です。


つまり身体の重心というのは、特定の点を中心とした(中心)点の集合体ということです。

さらに、身体を分解してみた時、脚の重さに対しての脚の重心点があり、腕の重さに対しての脚の重心点があります。

このように、物質としての中心だけをみても複数存在していることがわかります。


もう一つの運動面の中心はどうでしょう。
体幹や腹圧を使うと、身体の安定感や力の発揮のしやすさに大きく影響してきます。

では、「肘を曲げる」という動作に着目していきます。
肘関節は蝶番関節なので、単純な曲げ伸ばしをする回転運動です。そのときの中心点は、もちろん体幹や腹ではなく「肘」になります。

さらに、その時の筋肉を見ていくと、屈曲では上腕二頭筋、伸展では上腕三頭筋が働きます。
その筋肉が収縮する際の中心点もあり、収縮の程度や様式によって中心点は移動します。

このように、質量や運動を問わず身体には複数の中心が存在しています。
このことを『多重中心構造』と呼びます。



中心を自在にコントロールする「支点揺動」


スポーツをしていると、当たり負けしたり、フェイントに引っかかったりなど、相手選手に翻弄されるケースがあります。

その要因のひとつに『支点揺動(ようどう)』といって、身体にある無数の中心点を、状況に合わせて使い分けていることが挙げられます。

すべての運動はどこかに支点をつくって身体を動かします。(固定支点)
例えば肩をあげる動作で、肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節・胸鎖関節が支点になり、支点を切り替えながら動かしています。

しかし、その支点が1つや2つになってしまうと、肩の動きは悪くなります。
よくいわれる四十肩や五十肩は、支点が肩甲上腕関節のみ、もしくは胸鎖関節との2つになってしまった状態で起きる現象です。

その逆で、スポーツにおいては股関節支点や足関節支点の肩関節の使い方があります。
この使い方を把握できてないと、いくら筋トレでパワーをつけても、力負けしてしまうでしょう。


同じ動作でも支点が多く使えるようになると、
身体の不調は減り、運動能力も上げられます。